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緑雲の故事

今回杭州を訪ねた目的は実は三つ有ります。

① 今春2/22より行われる杭州市民蘭花祭りに出品する蘭を届けること。
  去年の春杭州で行われた浙江省春蘭展を尋ねたとき、友人の趙さんから
  来年の蘭展に参加しないか?もしその気あるなら持ってくるの面倒だったら
  蘭と鉢はこっちが準備してやってもいいぞ
  (つまり名前だけの参加でもかまわんということ)とのお誘いを受けました。
  本場の蘭展に参加するのは夢だけど、まさか名前だけはいやだし、
  それと開花時期が私の住む京都だと一月遅れの3月のお彼岸頃、
  暖めて無理矢理咲かしても良い花は咲かないし、移動時に花が痛むので
  つぼみ付きの5株と鉢を今回持って来て趙さんに預かってもらったのでした。
  どれか一鉢でもうまく会期に咲いてくれたら出品してもらって、5株どれもタイ
  ミングが合わなかったらその時は仕方がない、趙さんの蘭を貸して
  お願いしてあります。

② 杭州花圃の蘭苑を尋ねること
  去年の春尋ねる予定だったのですが責任者の許曄さんが不在で実現できません
  でした。ここは故松村謙三氏が何度か訪れた所で、氏が昭和34年(1959年)に
  持ち帰られた鄭孝荷/丁小荷の謎についても調べたいと思っていたところです。

③ 杭州産の春蘭名品「綠雲」のゆかりの地の訪問
  年末に日本語訳した「綠雲の故事」について、その縁の地、五雲山や留下村、
  邵芝岩筆荘を尋ねました。

  この報告をする前に「綠雲の故事」を読んでもらわないとお話になりません。
  いずれ『園芸JAPAN』に掲載されるはずですが一頁ずつの分割連載なので
  何年先になるかわからないし、
  今回お正月特別サービスで原文付きでアップしてみます。

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    陈大娘杭城遇佳婿
    邵芝岩名山求绿云

            ― 春兰名种绿云的故事

      陳おばさんは杭州城下で良き婿に出会い
  
    邵芝岩は名山に緑雲を求める

         ― 春蘭名品緑雲の故事

 

  在众多的春兰里,有一个称为“绿云”的奇种,它能开多瓣花、并蒂花,有时一朵花里有三个舌头(唇瓣)。它被人们誉为荷瓣之冠。多年来,大家一直传颂着关于它的那个娓娓动听的故事。
   数ある春蘭のなかに、緑雲という奇種がある。この花は多弁花で、2花咲きに咲きやすく、時には舌弁が3弁にもなることもあり、荷花弁の冠とも称されている。この蘭について昔から言い伝えられているこんな逸話がある。

 

   大清同治末(1874)年的杭州城里,春意料峭。街上稀疏的行人中走着个约莫五十开外的妇人,她头戴包帽,帽沿里插着支开着双朵的兰花。走在她旁边的人不时闻到一股清雅的兰香却不知香从何处而来,不由得把头扭过去想看个究竟,而这大娘却步履匆匆,脸上流露出几分紧张不安的神情,径自朝前走。
 大清同治年間の末(1874年)のこと、杭州城内は春とはいえまだ風は冷たい。行きかう人もまばらな杭州の街を年のころ50を過ぎた婦人が歩いている。頭にかぶった帽子のふちに2輪の花をつけた蘭花を挿している。すれ違う人は一瞬香る清雅な香りに振り返る。しかし婦人はひっ迫した落ち着かない表情でひたすら急ぎ足で歩いていく。

 

   她来到官巷口,突然被一位二十几岁的男青年叫住:“老妈妈,您头上的兰花从哪里摘来?”“乡下头!”大娘显然有些不耐烦。起步欲走。“哎哎……请别走。”青年人再次拦住她诚恳地说:“我愿意出五百两银子买您家的兰花。”这大娘一来是纠缠不过,二来是听他竟会出如此高价,着实感到几分惊奇,便停步对青年说:“我家住留下村,姓陈,今因五云山上自家的一块坟基地被别人强占,想去衙门打官司。”这青年听后一笑:“这么点小事!别急。我管保您老胜诉。如官司打不赢,由我出钱让您到五云山上另选块好的。”大娘的一双眼睛一眨不眨直盯着青年的脸,她由惊奇转变成几分惊喜接着便说:“如果你真能帮我打赢官司,我就把家里种的这盆兰花送给你。”
 役所の近くまで来たとき、突然ひとりの20歳過ぎの若者に呼び止められた。
「おばさん、頭に挿してるその蘭花はどこで摘んだの?」
「村のはずれさ」
婦人は明らかにうっとうしげに答え、行こうとすると、
「ちょっと待って、行かないでよ」
若者は遮り止めると礼儀正しく言った。
「銀500両出すからその蘭を譲ってくれませんか!?」
婦人はうっとうしく思いつつも思いもよらぬ高値を言う青年にいぶかしく思い、立ち止って、
「留下村の陳という者だけど、今、五雲山の墓地を他人に取られそうになってもめていて、役所に訴えに行くところなんだ」と答えた。
「なんだ、そんなことならお安い御用だ。ぼくがおばさんの勝訴を請け負ってあげるよ。もし負けるようなことがあったら、五雲山の別な場所にもっと立派な墓地を確保してあげてもいい」
婦人は瞬きもせず青年の顔をじっと見た。驚きはいくぶん喜びに変わった。
「もしほんとに私の訴えを助けてくれて勝つことができたら家にあるこの蘭はあんたにあげるよ」

 

   要问这青年是谁?他就是杭州官巷口开毛笔庄的富商邵芝岩,他自小跟着父亲拨弄兰花,耳濡目染,受到熏陶,早被人称为杭城大小兰痴。他虽然年轻但财大气粗跟衙门里的人多有交往,由他出面打官司,取胜当然不成问题。
 この若者はいったい何者か!?
彼は杭州の役所の前に毛筆店を構えている富商邵芝岩(しょうしがん)その人である。父親の薫陶を受けて幼少の時から蘭が好きで、
早くから杭州の蘭痴父子(ランキチ親子)と称され有名であった。彼は若いとはいえ財力も有り意気盛んで杭州官界に広い人脈を持っている。役所に持ち込まれる訴訟ごとの調停役を買って出て影響を与えるなどわけないことだった。

 

  时间一晃过去了几个月,那坟基地官司也早打赢,却一直没见这大娘送来兰花。邵芝岩爱兰心切,抽个空儿按大娘告诉的地址迳自去留下村拜望。
 数か月を経ずして墓地をめぐる争い事は勝訴したが、あの婦人はいっこうに蘭を持ってこない。
邵芝岩は蘭を愛することこのうえない。暇を見てかって聞いていた留下村の婦人の住所を尋ねてみた。

 

   到了陈家,知是那天大娘上公堂后回家路上受了风寒。他想,如今花期早过,很难分出那花是哪盆,他凭经验细细观察叶子,发现了那叶子特短阔,叶色浓绿有光泽,且有的叶子像螺旋形卷起的那一盆,暗想着“奇花有奇叶”那句口头常说的话,正欲开口取走,不料少女先开了腔:“这样吧,等我姆妈的病好后让她亲自把兰花送往先生府上去。”邵芝岩只好连声说:“好的,好的,”不一会,他告别了母女俩,回杭城去了。
 陳家に着いて、婦人は役所に訴えに行ったあの日の帰り、寒風にあたって体をこわしずっと寝込んだままであったことを知った。彼は思った。今は花の時期はとっくに終わって、蘭を見てもあの蘭であるか見分けることは難しい。経験を頼りに葉姿を子細に観察すると広く短い、濃緑で光沢のある少しねじれた葉の一鉢を発見した。心中思った。「奇花の咲く蘭は葉姿も変わっているものだ」
 これをもらって行こうと思ったちょうどそのとき、少女が口を開いた。
「こういうことなんです。母は病気が治ったらその蘭を持ってあなたのお宅に伺おうとしてたんです」
邵芝岩は「そうなの、わかりました」と言うしかない。ほどなく母娘に別れを告げ杭州城へと帰った。

 

   第二天,邵芝岩请了名医,亲自陪往留下村去给大娘医病。此后又接二连三买了药送去……一趟一趟亲自往返了一个多月,大娘终于恢、复了健康。
 翌日、邵芝岩は名医を連れて留下村の婦人を見舞った。以後、薬を買っては届けさせ、自身も一か月あまり連日通って見舞ったので婦人の病気はついに快復した。

 

   经过这么长一段时间的交往,邵芝岩这个小后生关心体贴别人、办事精明能干,给大娘全家人的印象甭说有多好,而邵芝岩也在和这母女俩的经常接触中对绿云了解日深,他已深深爱上了绿云。于是他把这事禀告了父亲,并由他父亲正式托人去留下村陈大娘家提亲。一个山村农家少女,竟遇上城里有名的富户来主动求亲,当然一口答应。
 この一連の交流を通して邵芝岩青年の人への思いやりと気遣いが婦人や家族に好感をもたれたことは言うまでもない。邵芝岩もまた母娘と付き合う中で娘“緑雲”の人柄を知り、緑雲に対する愛情は日に日に深くなっていった。彼はこのことを父親に告げ、父親は人を介して正式に陳婦人に縁談を申し込んだ。山村の農家の娘が杭州城の有名な富戸からの申し出を快諾したのはもちろんである。

 

   结婚喜庆之日,锣鼓喧天响,爆竹如雷鸣,留下村里像开了锅的水,热闹非凡,人们跟在花轿后看嫁妆。除了一些杂用物品之外最显眼的要算是缠着红绸子的一盆兰花,议论声、嘻笑声融成一片。
 婚礼の日、銅鑼や太鼓、爆竹は鳴り響き留下村は鍋の湯が沸き立つように賑わった。人々は花嫁の輿(こし)に続く荷を見て笑いさざめいた。たくさんの嫁入り道具のほか、ひときわ目立ったのは赤い繻子(しゅす)に飾られた一鉢の蘭花であった。

 

   邵芝岩既得淑女又获比金子还贵几倍的奇兰,一时成了杭城不少人的美谈。婚后,夫妻俩更是恩爱和美。为了留下这段美好的记忆,邵芝岩用妻子绿云的名字命名了这兰花,还特地托艺人将兰花“绿云”的形象做成浮雕,作为邵芝岩笔庄的微标,一直沿袭到今天。
 卲芝岩が淑女を得たのみならず、何倍の黄金にも勝る蘭花奇種を得たというこの美談は杭州城内の人たちの間で語りぐさとなった。夫妻は仲睦まじく暮らし、この美しい記憶を残すために卲芝岩は妻緑雲の名をそのままこの蘭花の名前とし、職人に頼んでこの蘭の姿をレリーフに彫らせ、卲芝岩筆店の商標とした。この商標は今日に至るまでずっと受け継がれている。

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まだ荒訳でもう少し修正したいところはあるのですが・・・

誤訳や、こう表現した方がもっと良いんじゃない!?というところなどご指摘、ご指導していただけるとありがたいです。

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コメント

σ(^^) の筆には「武州邵芝巌」と、彫ってあるのですが、「武州」って、その辺なのですか?

投稿: 儿 | 2016/01/03 18:50

杭州の古名を武林といいます。
空港バスの発着場は武林広場のすぐ近くにあります。
蘭にも武林仙とか武林第一梅ってありますね。

投稿: 中国蘭迷 | 2016/01/03 19:01

そうそう、その武林でした。
杭州の古名でしたか・・happy01
で、その読み方(発音)は?

投稿: 儿 | 2016/01/03 19:24

今の武林はビル街の街中でそのような伝承を実感できませんが、古都の杭州らしいお話ですね。
杭州の市街地は緑が多い中国には稀な古都(外国人の多い観光地です)杭州市の環状道路沿いに蘭園らしきものが散見出来ましたが、次回行くことが出来たら伝承の雰囲気を味わって参ります。
残念ながら郊外は新築の工場地帯とマンションばかりですが。

投稿: kumasann | 2016/01/03 20:24

上のタイトルで「雲の故事」
緑が見えないのって 事故?

投稿: 儿 | 2016/01/04 14:12

ほんとだ
緑が旧字体の綠になってたんで直したつもりが消えてた。
添削もありがとうございました。修正しときました。

投稿: 中国蘭迷 | 2016/01/04 14:58

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