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続・古代の蘭

 「日本の古本屋」を通じて注文していた『中華名物考』青木正兒著という本が届いた。先日のフジバカマの件を調べていたらこの本に蘭の呼び名の経緯が詳しく書かれていると知ったからだ。

この本の「香り草小記」という項によると
北宋の詩人、黄山谷(1045~1105)が『幽芳亭に書す』と題する文章に、
《近世の謂はゆる蘭すなはち『蘭花』を以て古の「楚辞」に詠ぜられたる『蘭』及び『蕙』と見なして其の優劣を論じ、而して二者の区別を説明して『其ノ華ヲ発スルニ至リテ、一幹ニ一華ニシテ香ノ余リ有ルモノハ蘭デアリ、一幹ニ五七華ニシテ香ノ足ラザルモノハ蕙デアル』と云った。これがそもそも間違いの広まる元である》
《その後、南宋に及んで福建を中心に蘭蕙の園芸栽培が盛んになり、文人画家たちが水墨画の題材として貴ぶに至り、遂に古の蘭の名を奪ってしまった。
そこでこの偽蘭の盛行に憤慨した南宋の朱熹は『楚辞辯證』(1199年)で
「大抵古の香草と云うものは、必ずその花も葉も皆香り、乾いても変わらないから、刈って佩(おびもの)とすることができる。もし今謂うところの蘭のようであったならば、花は香るが葉は香気が無く、香りは美しいが質が弱く萎びやすく、とても刈って帯びられるものではない。それが古人の指す所でないことは甚だ明らかである」と辯じ、
また南宋の陳傳良は『盗蘭説』を作り、元の方囘は『訂蘭説』を作って、皆其の偽を辯じて、誤を正そうとしたけれども大勢は如何ともしがたく、遂に明末の李時珍の『本草綱目』に至り、
・古代の蘭→『蘭草』『澤蘭』『山蘭』 とし
・近頃流行りの偽蘭→『蘭花』  として区別しようということになったそうです。

ちなみに我が国の小野蘭山の『本草綱目啓蒙』によると
蘭草:フジバカマ、山蘭:ヒヨドリバナ、澤蘭:サワヒヨドリバナにあたるそうです。
どれも花だけでなく葉、茎にも芳香があり、その香りは陰干しにするといっそう強くなり、昔の貴族は風呂に入れて身を清めたり、ドライフラワーにして衣服に付けて香水代わりにしたようです。

黄山谷が蘭蕙にしてしまった「偽蘭」がそれ以前なんと呼ばれていたかはこの本にも書かれていません。
名も無き草花だったんでしょうか?!

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コメント

面白い話で情報ありがとうございます
ちょっと家の本を見てみましたが
う~ん、その昔はなんて呼んでいたやらわかりませんでした
興味は尽きませんね

投稿: ハッスル | 2005/07/26 18:27

標高1,500㍍辺りでは蘭草は生育しないので山蘭しかありませんでした。ヨツバヒヨドリが印象に残っています。
偽蘭は多分「シラン」だったのでは・・・・

投稿: 蘭翁 | 2009/10/10 22:04

>多分「シラン」

今となっては「ワカラン」ですね。

投稿: 中国蘭迷 | 2009/10/11 22:08

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